空調機の塩害仕様の違いについて
海の近く、あるいは腐食を少しでも抑えたい現場では、室外機を「塩害仕様」にする方が多い。
ところが――
いざ「塩害仕様って具体的に何が違うの?」となった瞬間、情報が急に薄くなる。
ネットには「防食塗装」「耐食性アップ」などの言葉は出てくる。
だが、どこが・どの程度・何で変わっているのかは、意外なほど書かれていない。
だから今回は、メーカーに確認した。
現場で判断するために必要なのは、雰囲気じゃなく“差分”だからだ。
1. 結論から言うと、パッケージの塩害仕様は「中身の詳細が表に出ない」ことが多い
例として、ダイキン工業のパッケージエアコン(約10年前の機種)について確認したところ、回答はこうだった。
- パッケージエアコンの塩害仕様は、詳細を公表していない
- 日本冷凍空調工業会の「JRA9002」に基づく
ここで多くの人が止まる。
「JRA9002って、結局なに?」となるからだ。
2. JRA9002は「塩害環境における、主に塗装部品の試験基準」
JRA9002は、ざっくり言えば
屋外に置かれる空調機器の外郭部品など、“主として塗装する部品”の塗膜について試験方法を定めた基準だ。
重要なのはここ。
塩害仕様とは、魔法の仕様ではない。
「壊れない」ではなく、“劣化しにくくする”方向に寄せた仕様だということ。
そして、その中心にあるのは 塗装・コーティング・めっき・材質選定 だ。
3. 参考になるのは、むしろ「公開されている塩害仕様の具体例」
メーカーからは「ルームエアコンの塩害仕様は公開している。そこに準じていると考えてよい」という趣旨の案内があった。
そこで、公開情報(例)として整理すると、塩害仕様の“差分”はこういう方向になる。
塩害仕様で「厚くなる/強くなる」ポイント(例)
- 外板(筐体):表面だけでなく、裏側まで塗装が入る(標準との差が出やすい)
- 基板:コーティング処理は標準でもあるが、塩害仕様は処理面積が広い(守る範囲を広げる)
- ネジ等の締結部:標準は亜鉛ニッケル系、塩害仕様は**重要部にSUS(例:SUS410)**などが入ることがある。
- 熱交換器フィン:標準の親水処理に対して、塩害仕様は耐食樹脂コートなど“強いコート”が入ることがある
- 機内冷媒配管:処理なし(ここは過度に期待しない方がいい)
(注)機種・シリーズ・年式で違いは出る。ここは“方向性”として捉えてほしい。
4. ここが腹落ちポイント:塩害仕様の正体は「弱点に厚みを足す」こと
現場目線で言えば、塩害で効いてくるのは主にこの4点だ。
- 外板・骨格(錆びれば進行する)
- 熱交換器(腐食が進むと能力・寿命に直撃する)
- 電装(基板・端子の腐食は不具合の引き金になる)
- 締結部(ネジが死ぬと整備性が終わる)
塩害仕様は、この弱点に対して
「塗る」「覆う」「材質を変える」「めっきを強くする」
――この“足し算”をしている。
だからこそ、言い方は冷たいが真実としてこうなる。
塩害仕様は、腐食をゼロにするものではない。
腐食が“致命傷になるスピード”を遅らせる投資だ。
そしてこの投資を活かすかどうかは、最後は据付条件と維持管理で決まる。
5. もう一つ大事な話:塩害仕様と耐重塩害仕様は「前提の環境」が違う
ダイキンでも、塩害仕様(E)に加えて、上位として**耐重塩害仕様(H)**が用意されている。
目安としては、例えば以下のように整理される(代表例)。
- 耐塩害(E):潮風に“直接は当たらない”が、その雰囲気がある場所
- 耐重塩害(H):潮風の影響を受ける場所(ただし塩分を含んだ水が直接かからない場所)
距離の目安として「海から約300m以内/300m超〜1km」などの基準が示されるケースもあるが、季節風・台風・建物の向き・雨で洗われるか等で条件は変わる。 ダイキン+1
ここで言いたいのは一つ。
“海が近い=即重塩害”ではない。
“塩が当たる”のか、“塩の気配”なのかで選ぶ。
そして、どちらを選んでも
「万全ではないので据付とメンテに配慮が必要」
という注意は、基準側の資料にも明確に書かれている。 空調・換気・給湯設備(ビジネス) | Panasonic+1
6. じゃあ現場では、どう判断してどう提案すべきか
自分が提案時に大事にしているのは、ここだ。
- 仕様(標準/耐塩害/耐重塩害)を“言葉”で選ばない
→ 風向き、遮蔽物、雨当たり、錆の出方(周辺設備)まで見て選ぶ - 「塩害仕様=安心」ではなく、「延命条件」をセットで出す
→ 設置位置の工夫、点検頻度、洗浄の考え方まで含めて設計する - “どこが強化されるか”を説明して、期待値を正しく合わせる
→ フィン・外板・基板・ネジは強くなるが、配管が無敵になるわけではない

