業務用エアコンのガス漏れと冷凍機油|油不足が圧縮機故障につながる理由

業務用エアコンのガス漏れというと、多くの場合は「冷媒が減る」「冷えなくなる」「ガスを補充すれば戻る」と考えられがちです。
しかし、実際の現場ではそれだけでは済まないことがあります。
注意しなければならないのは、冷媒漏れと同時に冷凍機油も外へ出ている可能性があるという点です。
冷媒配管や熱交換器、フレア部、ろう付け部、バルブ周辺などから漏れが起きた場合、漏れ方によっては冷媒だけでなく、冷凍機油を含んだ状態で漏れていることがあります。
漏れ箇所を修理し、冷媒を規定量まで充填すると、圧力や吹出温度が一時的に戻ったように見える場合があります。
しかし、外へ出てしまった冷凍機油は、冷媒のように自然には戻りません。
この状態を見落とすと、修理直後は動いていても、後から圧縮機の異音、発熱、能力低下、保護停止、最悪の場合は圧縮機故障につながることがあります。
この記事では、業務用エアコンのガス漏れ時に冷凍機油がどう影響するのか、油不足のまま運転すると機械内部で何が起きるのかを、現場目線で解説します。
① 冷凍機油は圧縮機の中だけにあるわけではない
冷凍機油は、圧縮機内部の潤滑を行うために必要な油です。
ただし、冷凍機油は圧縮機の中だけに完全に留まっているわけではありません。
運転中は、冷媒と一緒に一部の油が冷媒回路内を循環しています。
圧縮機から吐き出された冷媒には、細かい油分が混ざっています。
その油は配管や熱交換器、分岐部を通りながら、最終的に圧縮機へ戻ることで潤滑が維持されます。
つまり、冷媒回路の中では、冷媒の流れと油の戻りが関係しています。
業務用エアコンでは、冷媒だけでなく、この油の動きも非常に重要です。
② ガス漏れで冷凍機油まで減る理由
ガス漏れが起きた時、漏れるのは冷媒だけとは限りません。
冷媒回路内には、冷媒と一緒に冷凍機油が循環しています。
そのため、漏れ箇所や圧力状態によっては、冷媒と一緒に油分も外へ出ます。
特に注意したいのは、以下のような箇所です。
- 圧縮機吐出側に近い配管
- 高圧ガス側
- ろう付け部
- フレア接続部
- 熱交換器の漏れ
- 分岐部やバルブ周辺
漏れ箇所に黒ずみや油染み、ベタつきがある場合は、冷媒だけでなく冷凍機油も一緒に出ている可能性があります。
もちろん、すべてのガス漏れで大量の油が出るわけではありません。
漏れ箇所、漏れ量、圧力状態、漏れていた期間、運転状態によって、油の流出量は変わります。
ただし現場では、油が出ていないとは言い切れないという前提で見る必要があります。
③ 冷媒だけ補充しても元通りとは限らない
ガス漏れ修理後に冷媒を規定量まで充填すると、圧力や温度が一時的に安定することがあります。
そのため、表面上は「直った」ように見える場合があります。
しかし、冷媒が規定量に戻ったことと、機械内部の状態が完全に戻ったことは同じではありません。
問題は、漏れた時に失われた冷凍機油です。
冷媒は重量で回収・再充填できます。
一方で、漏れによって外へ出た冷凍機油の量は、外観だけで正確に判断できるものではありません。
冷媒を規定量まで入れても、圧縮機内部の油量が不足していれば、機械としては危険な状態が残ります。
この状態で運転を続けると、圧縮機内部の潤滑が不十分になり、摩耗や発熱が進む可能性があります。
④ 油不足で圧縮機内部に起きること
冷凍機油の役割は、単なる潤滑だけではありません。
圧縮機内部では、軸受、摺動部、スクロール、ロータリー、スクリューなどの機構部を守るために油膜が必要です。
油が不足すると、まず潤滑不良が起きます。
油膜が薄くなると、金属同士の接触が強くなり、摩耗が進みます。
摩耗が進むと、圧縮効率が落ち、発熱も増えます。
その結果、以下のような不具合につながることがあります。
- 圧縮機の異音
- 振動の増加
- 吐出温度の上昇
- 圧縮効率の低下
- 冷暖房能力の低下
- 保護停止
- 圧縮機焼損
油不足は、すぐに分かりやすく止まるとは限りません。
最初は「少し音が違う」「能力の戻りが鈍い」「吐出温度が高め」といった違和感として出ることがあります。
ここを見落とすと、後から大きな故障につながる可能性があります。
⑤ ガス漏れ後は油戻りも悪くなりやすい
ガス漏れが起きると、冷媒量が減ります。
冷媒量が減ると、冷媒回路内を流れる冷媒の量も少なくなります。
その結果、配管内の流速が落ちることがあります。
冷凍機油は冷媒の流れに乗って圧縮機へ戻ります。
そのため、冷媒流量が落ちると、油が圧縮機へ戻りにくくなることがあります。
これが油戻り不良です。
特に、以下のような機械では注意が必要です。
- ビル用マルチエアコン
- 設備用エアコン
- 長配管の空調設備
- 立ち上がり・立ち下がりの多い配管
- 室内機台数が多い系統
- 分岐が多い冷媒回路
このような設備では、配管内や熱交換器内に油が滞留しやすくなります。
ガス漏れによって冷媒流速が落ちると、油戻りのバランスが崩れ、圧縮機内の油量不足につながることがあります。
⑥ ビル用マルチで特に注意が必要な理由
ビル用マルチエアコンは、1台の室外機に複数台の室内機が接続されている設備です。
配管が長く、分岐も多く、運転する室内機の台数や負荷も変わります。
そのため、冷媒量が不足した時の影響が単純ではありません。
一部の室内機だけ効きが悪い。
運転が安定しない。
エラーが出たり出なかったりする。
冷媒を補充しても能力の戻りが鈍い。
圧縮機の音や吐出温度に違和感がある。
このような症状が出ることがあります。
ビル用マルチでは、冷媒量だけでなく、冷媒の流れ方、油戻り、圧縮機状態まで含めて確認する必要があります。
単純に「ガスを足して様子を見る」という対応を繰り返すと、圧縮機に負担をかけ続けることになります。
⑦ 油不足で起こりやすい症状
冷凍機油不足がある場合、次のような症状が出ることがあります。
冷え方・暖まり方が鈍い
冷媒量を規定量に戻しても、圧縮機内部の状態が悪いと、能力が思うように出ません。
圧力はそれなりに出ているのに、吹出温度や立ち上がりが悪い場合は注意が必要です。
吐出温度が高い
油不足で潤滑や冷却が不十分になると、圧縮機内部の発熱が増え、吐出温度が高くなりやすくなります。
高吐出温度停止が出る前の段階でも、運転データに違和感が出ることがあります。
異音や振動が出る
油膜が不足すると、圧縮機内部の機械音や振動が変わることがあります。
「まだ動いているから大丈夫」と判断せず、音や振動の変化も確認する必要があります。
保護停止を繰り返す
吐出温度異常、圧縮機保護、電流異常などの形で停止することがあります。
表示されるエラーだけを見るのではなく、その背景に油不足や圧縮機内部の状態悪化がないかを見る必要があります。
⑧ 漏れ箇所によって油の出方は変わる
ガス漏れといっても、どこから漏れているかによって、油の出方は変わります。
吐出側・高圧側の漏れ
吐出側や高圧ガス側は、油を伴いやすい箇所です。
圧縮機から吐き出された冷媒には油ミストが含まれているため、漏れ方によっては油分が多く出ることがあります。
漏れ跡に油染みや黒ずみがある場合は、圧縮機への影響を慎重に見る必要があります。
液管側の漏れ
液管側では、吐出側ほど分かりやすく油が出ないこともあります。
ただし、液管だから油は関係ないと決めつけるのは危険です。
機種や運転状態によって、油の影響は変わります。
吸込側の漏れ
吸込側は、圧縮機へ戻る冷媒が流れる部分です。
油を含んだ戻り冷媒が関係するため、吸込側の漏れでも油の影響を考える必要があります。
現場では、漏れ箇所、漏れ量、漏れていた期間、運転継続時間を合わせて判断します。
⑨ 油を足せばいいという単純な話ではない
冷凍機油が減っている可能性があるなら、単純に油を足せばよいと思われるかもしれません。
しかし、油管理は簡単ではありません。
冷凍機油は、機種や冷媒に合った種類でなければなりません。
また、量も適正である必要があります。
不足していれば潤滑不良につながりますが、多すぎても問題になります。
油が多すぎると、熱交換器や配管内で油滞留を起こし、能力低下や油戻り不良につながる可能性があります。
そのため、油の追加は勘で行うものではありません。
必要なのは、以下の確認です。
- 漏れ箇所と漏れ方
- 油染みの有無
- 冷媒回収量
- 機種のサービス資料
- メーカー基準
- 運転データ
- 圧縮機の音・吐出温度・電流値
冷媒漏れ修理後の油管理は、機種やメーカー基準を確認しながら慎重に判断する必要があります。
⑩ ガス漏れ修理後に確認すべきポイント
ガス漏れ修理後は、漏れを止めて冷媒を入れるだけで終わりではありません。
本当に確認すべきなのは、機械が安全に運転できる状態へ戻っているかです。
確認するポイントは次の通りです。
漏れ箇所と油染み
漏れ箇所に油染みがあるか、黒ずみがあるか、にじみ程度なのか、噴き出しに近かったのかを確認します。
冷媒回収量と充填量
どれだけ冷媒が残っていたのか、規定量に対してどれだけ不足していたのかを確認します。
圧力・温度・吹出状態
吸込圧力、吐出圧力、配管温度、吹出温度、熱交換状態を総合的に見ます。
吐出温度と圧縮機音
油不足がある場合、吐出温度や圧縮機音に違和感が出ることがあります。
運転継続後の安定性
試運転直後だけでなく、負荷がかかった状態で安定して運転できるかを確認します。
修理直後だけ正常に見えても、時間が経つと異常が出る場合があります。
⑪ ガス補充だけを繰り返してきた機械は危険
特に注意したいのは、過去に何度もガス補充だけを繰り返してきた機械です。
漏れを直さずに冷媒だけ補充していると、そのたびに冷媒が漏れ、場合によっては冷凍機油も少しずつ失われます。
また、冷媒不足の状態で長く運転されていた場合、油戻りが悪くなり、圧縮機内部に負担がかかっている可能性があります。
このような機械では、単純に漏れ箇所を直して冷媒を入れれば完全に戻るとは限りません。
圧縮機の状態、運転音、吐出温度、電流値、能力の戻り方まで確認したうえで、修理継続が妥当か、更新を検討すべきかを判断する必要があります。
まとめ
業務用エアコンのガス漏れでは、冷媒不足だけでなく、冷凍機油の流出や油戻り不良にも注意が必要です。
冷媒を規定量まで充填して一時的に運転できたとしても、漏れによって失われた油が戻るわけではありません。
油不足が残っていると、圧縮機内部で潤滑不良、発熱、摩耗、圧縮効率低下が進み、異音、能力低下、保護停止、圧縮機故障につながる可能性があります。
特に、ビル用マルチエアコン、設備用エアコン、長配管の空調設備、過去にガス補充だけを繰り返してきた機械では注意が必要です。
業務用エアコンのガス漏れ修理では、漏れ箇所の修理、冷媒の回収・再充填だけでなく、油の影響、圧縮機状態、運転データまで含めて判断することが大切です。
浜松市周辺で、業務用エアコン、ビル用マルチエアコン、設備用空調機のガス漏れ、冷媒漏れ、能力低下、圧縮機異常でお困りの際は、京匠技研株式会社までご相談ください。
現場の状態を確認し、冷媒漏れだけでなく、冷凍機油や圧縮機への影響まで含めて点検いたします。

