仕事を選んでいるのではない。勝負する土俵を選んでいる。

今日、経営者会の二次会で、ある社長さんから
「家庭用の工事はやっていないのか?」
と聞かれた。

私は
「やっていません」
と答えた。

その後に、
「儲からないので」
というような言い方をしてしまった。

あとから振り返って、あれは言葉が雑だったと思った。

私が言いたかったのは、
儲かるか儲からないかだけで仕事を見ている、ということではない。

ただ、一般住宅のルームエアコン工事という分野は、低価格帯での競争が非常に激しい世界でもある。

価格で比較されやすく、スピードや台数で勝負になりやすい。
技術の差が伝わりにくい場面も多い。

もちろん、その土俵でしっかり商売をされている会社もある。
それを否定するつもりはまったくない。

ただ、弊社はそこを主戦場にしようとは思っていない。

なぜなら、自分が本当に価値を出せる場所はそこではないと分かっているからだ。

空調業と名乗る人はたくさんいる。

世間から見れば、どちらも同じ“空調屋”に見えるかもしれない。
家庭用ルームエアコンを取り付ける人も空調屋。
店舗や工場の設備を触る人も空調屋。
修理をすると言う人も空調屋。

だが、私は正直、それを全部ひと括りにして同業だとはあまり思っていない。

同じ空調でも、やっている仕事の中身がまるで違うからだ。

私は一般住宅のルームエアコン工事に手を出していない。
それは、できないからではない。
苦手だからでもない。

実際、昔は某電器店の下請けで、ルームエアコンを台数勝負で取り付けていたこともある。
むしろ得意な方だ。

だから家庭用が分からないわけではない。
やろうと思えばできる。

だが、そこは私の土俵ではない。

私が本当に勝負したいのは、別の領域だ。

それが修理である。

ただし、ここで言う修理は、単に部品を交換するだけの話ではない。

基板を替えた。
センサーを替えた。
ファンモーターを替えた。
それで直った。

もちろん、それも作業の一つではある。

だが私は、部品を入れ替えただけで「修理ができる」とは思っていない。

大事なのは、
なぜそこが悪くなったのか。
なぜその異常が出ているのか。
なぜその機械が止まったのか。
そこを見抜く力だ。

症状を追い、運転データを見て、制御を読み、機械の構造を理解し、原因を絞り込む。
そして、現場を止めずに復旧まで持っていく。

そこまでやって、初めて本当の意味での修理だと私は思っている。

浜松にも空調に関わる会社は数多くある。
だが、その中で難しい修理まで本当に得意としている会社は、ほんの一握りだと感じている。

それほど、修理という仕事は深い。

知識だけでも足りない。
経験だけでも足りない。
理屈だけでも足りない。

現場で積み重ねてきた感覚、異常の癖を読む力、故障の流れを頭の中で組み立てる力。
そういうものが必要になる。

そして世の中には、まだまだ皆の知らない空調の世界がある。

難しい機械ほど、正直、逃げ出したくなるほど難しい。
簡単に語れるような世界ではない。

壊れたら一大事という現場もある。
止まれば生産が止まる。
止まれば施設運営に支障が出る。
止まれば大きな損失につながる。

実際に、これが直らなければ億単位の損害が出る。
そんな場面も決して珍しくはない。

しかも、そういう時ほど、周りに見守られながら修理することになる。

現場の責任者。
設備担当者。
関係者。
時には他業者もいる。

その空気の中で、原因を追い、判断し、手を動かし、復旧まで持っていく。

生半可な知識では通用しない。
小手先の経験でも通用しない。

そういう場面こそ、
その人間がどれだけ冷凍空調というものに熟知しているかがはっきり出る。

機械の構造。
制御の考え方。
冷媒の流れ。
電気の読み。
異常の出方。
故障の癖。

それらを本当の意味で理解していなければ、最後の最後で見抜けない。

サービスエンジニア上がりの空調屋は、その点でやはり強い。
機械の構造、制御、運転の流れ、異常の出方まで踏み込んで見てきているからだ。

私自身、そこを通ってきた。

だからこそ、自分の持っている技術には希少価値があると思っている。
空調に関する知識も、修理の技術も、簡単に真似できるものではない。

少しかじったくらいでは辿り着けない領域がある。
同じように空調を触っているように見えても、中身はまるで違う。

同業であって、全然同業ではない。
私はそう思っている。

何でもやることが強さではない。
何でも受けることが正しさでもない。

自分がどこで勝負するのか。
どこで本当に価値を出せるのか。
そこを見極めることの方が、よほど大事だ。

私は仕事を、儲かるか儲からないかだけで選びたいわけではない。

ただ、自分の持てる技術が最も活きる場所で勝負したい。
本当に困っている現場で、自分にしか出せない価値を出したい。
そう思っている。

工場。
店舗。
施設。
介護現場。
止めるわけにはいかない空調の現場。

他社では判断が難しい故障。
更新しかないと言われた設備。
夜間や休日に止まり、今すぐ復旧しなければならない現場。

そういう場所こそ、私の土俵だ。

今日、私はそれをうまく言葉にできなかった。
だから「儲からない」という雑な表現になってしまった。

だが、本質はそこではない。

仕事を選んでいるのではない。
勝負する土俵を選んでいるのだ。

そして私はこれからも、
自分にしかできない修理で勝負していく。