任せるのが一番難しい

私は昔から、
人に何かを任せるのがあまり得意ではない。

頼むより、
自分で片付けてしまう方が早いし、楽だと思ってきた。
誰かに説明して、待って、確認して、
それなら最初から自分でやった方がいい。

ずっと、そういうタイプだった。

仕事でも同じで、
気がつけば自分で抱え込んでしまう。
結果として、何とか回ってしまうから、
余計にそのやり方が染みついていく。

自分でやれば、早い。
自分でやれば、確実。
自分でやれば、結果も読める。

だからつい、
「自分でやった方がいい」と思ってしまう。

だが、それを続けていると、
いつまでも仕事は増え続けるし、
自分の手が止まった瞬間に、全体も止まる。

頭では分かっていても、
実際に任せるとなると、簡単にはいかない。

やり方が違う。
判断のスピードが違う。
仕上がりの基準も、まだ揃っていない。

そのたびに、
つい口を出したくなる。
直したくなる。
自分でやり直したくなる。

だがそこで全部引き取ってしまえば、
相手は次に進めない。

任せるというのは、
ただ作業を振ることではない。

判断する場面を渡すことだと思っている。

失敗するかもしれない状況ごと、
一度相手に預けてみる。
そして、結果を一緒に振り返る。

その繰り返しでしか、
本当の意味で任せられるようにはならない。

正直に言えば、
見ている方がしんどい時もある。

「そこは違う」
「今のは危ない」
そう思いながら、あえて手を出さない。

だが、その時間を通らなければ、
いつまでも自分の分身は育たない。

全部を自分で抱えるのは、
責任感が強いからではなく、
単に慣れているだけなのかもしれない。

任せる方が、ずっと気を使うし、
ずっと神経を使う。

だから、任せるのが一番難しい仕事なのだと思う。

それでも、
仕事を続けていく以上、
いつかは任せなければならない。

自分がいなくても回る形を作ることも、
経営の仕事の一部だ。

任せるというのは、
自分の仕事を減らすことではない。

仕事の質を、次の段階に進めることだと思っている。

だから今日も、
完璧じゃなくても、少しずつ任せていく。

時間はかかる。
遠回りにも見える。

だが、その遠回りが、
あとになって一番の近道になることも、
現場では何度も見てきた。

任せるのは難しい。
だが、避けて通れる仕事でもない。

今は、そう思って向き合っている。